人気の米国高配当ETFの三銘柄(VYM, HDV, SPYD)をpythonを用いて株価解析と時系列予想を行います。
比較した結果、分配金とキャピタルゲインを考慮するとVYMが一番良い成績となりました。
一方で、VYMは分配利回りが低いので、高い分配利回りが欲しい方はHDVやSPYDに投資することをお勧めします。
時系列予想した結果では3銘柄すべて今後も順調に成長することが予想されました。
高配当ETF投資は確実にインカムゲイン(分配金)を増やす投資手法として有効です。
高配当株に投資するか迷っている方の少しでも参考になれば嬉しいです。
- 米国高配当ETFに興味のある方
- VYM, HDV, SPYDどちらが良いか迷っている方
- 米国高配当ETFの過去の実績を知りたい方
- pythonで株式解析をしてみたい方
目次
高配当投資・高配当ETFとは
私のおすすめするインデックス投資とは異なり、高配当投資は分配金を得ることを目的とした投資手法になります。
インデックス投資ではキャッシュフロー(分配金)が発生しないので、投資で生活が豊かになるのを感じにくい投資手法です。
インデックス投資についてはこちらから⇩
一方で高配当投資はキャッシュフローがあるため、毎年投資したお金が成長していることを感じやすいです。
インデックス投資よりも投資手法はやや難しいですが、分配金を貰いながらお金が増えることを感じたい方にお勧めの投資手法です。

特に高配当ETFでは個別銘柄を選定する必要がないため、難易度が低く投資初心者におすすめの投資手法です。
高配当ETFについてこちらから⇩
比較対象 VYM・HDV・SPYDとは?
VYM・HDV・SPYDは米国ETFの一種です。
3銘柄とも高い配当利回りが魅力で人気のある商品です。
VYM | HDV | SPYD | |
運営会社 | Vanguard | BlackRock | State Street |
設定日 | 2006/11/16 | 2011/3/31 | 2015/10/22 |
経費率 | 0.06% | 0.08% | 0.07% |
分配金 | 2.70% | 3.58% | 4.99% |
純資産総額 | 392 億USドル | 71.8 億USドル | 50.2 億USドル |
構成銘柄数 | 410 | 75 | 79 |
配当時期 | 年4回 | 年4回 | 年4回 |
VYM
Vanguard社が運営する高配当ETFです。
設定日がこの3銘柄の中では一番古く、歴史のあるETFです。
構成銘柄数も410銘柄と十分に分散が効いているのが特徴になります。
詳しくはこちらから⇩
HDV
BlackRock社が運営する高配当ETFです 。
構成銘柄数が3銘柄のなかで最も少ないのが特徴です。
詳しくはこちらから⇩
SPYD
State Street社が運営する高配当ETFです。
運営の歴史が最も短く、6年ほどしかありません。
一方で3銘柄の中で最も高い配当利回りがあります。
詳しくはこちらから⇩
各銘柄の配当利回り
株式を解析する前に各ETFのこれまでの配当金と配当利回りを紹介します。
過去の配当金
2021年12月17日時点での過去の配当利回りの実績です。
- VYM ⇒きれいな右肩上がりです。安心して将来の投資実績も期待できそうです。
- HDV ⇒何度か減配の年もありますが概ね右肩上がりです。2021年は減配になりました。
- SPYD ⇒配当金は横ばいで増配・減配のばらつきがあります。長期保有するには少し不安材料です。

配当利回り
続いて2021年12月17日時点での配当利回りも確認したいと思います。
- VYM ⇒配当利回りは3銘柄で最も低いです。一方で次章で説明しますが、株価が最も成長しているためとも考えられます。
- HDV ⇒3銘柄では中間の利回りです。利回りは3.5%~3.8%の間で安定していることが分かります。
- SPYD ⇒最も配当利回りが高いです。一方で利回りが4.1%~5.2%と年によっての幅が大きくやや不安定です。

投資先のセクター比率
各高配当ETFの投資先について比べてみます。
VYM | HDV | SPYD | |
1位 | 金融 23.0% | ヘルスケア 20.8% | 公共事業 17.9% |
2位 | 生活必需品 12.5% | エネルギー 18.4% | 金融 17.7% |
3位 | ヘルスケア 12.3% | 生活必需品 17.1% | 不動産 16.5% |
4位 | 産業 10.0% | 通信 11.5% | エネルギー 12.0% |
5位 | 一般消費財 8.70% | 情報技術 10.0% | 生活必需品 8.55% |
HDVとSPYDは上位3位までに同じセクターが入っていません。
そのためHDVとSPYDの間に相関関係が低くなり、値動きが異なると考えられます。
相関関係についてもこの後検討を行うので、参考にしてください。
株価時系列比較
まず各ETFの株価推移を比較します。
2015年10月を100としたときの2021年12月までの6年間の各株価の推移です。
コード
import pandas as pd
import numpy as np
import matplotlib.pyplot as plt
import seaborn as sns
import pandas_datareader.data as web
import datetime
from scipy import stats
%matplotlib inline
import warnings
warnings.filterwarnings('ignore')
# 期間設定
start = datetime.datetime(2015,10,31)
end = datetime.datetime(2021,12,10)
# データ取得
df = web.DataReader(['VYM','HDV','SPYD'],'yahoo',start,end)['Adj Close']
# 系列名変更
df.columns = ['VYM','HDV','SPYD']
# 2015年10月を100として指数化
df_index = df / df.iloc[0]*100
sns.set_style('whitegrid')
df_index.plot(figsize=(10,5))
実行結果


VYMが最も良い運用実績をしているね。
一方でSPYDはコロナショック後の株価の戻りは遅かったですが、その後HDVを抜く株価の推移をしています。
2011年10月から2021年12月までの十年間で各ETFは何倍になったか示します。
2011年10月から何倍になったか | |
VYM | 1.63倍 |
HDV | 1.32倍 |
SPYD | 1.41倍 |
配当金を出しながらも約6年で全てのETFで1.3倍以上の株価上昇しています。

投資元本が増えることは 安定した分配金を手に入れる上で重要です。
なぜなら、分配金を手に入れてもその分投資元本が減ってしまえばトータルはマイナスになってしまうからです。
月次収益率の比較
月次収益率について比較します。
推移を下記にコードとpythonの実行結果を示します。
コード
# 日次データから月次データに変換(月末値)
df_index_m = df_index.resample('M').last()
# 収益率に変換
df_r_m = df_index_m.pct_change().dropna()
# 月次収益率をプロット
df_r_m.plot(figsize=(10,5))
実行結果

3銘柄とも似た推移をしています。
2020年のコロナショックの際に3銘柄とも大幅に下落しています。
特にSPYDでは約28%も突出して減少しています。大幅に減少した理由はSPYDのみ不動産セクターに投資しているためと考えられます。
より詳しくデータを解析し比較していきます。
相関関係の比較
まずは各ETFの相関関係を調査します。
コード
df_r_m.corr() # 相関関係
実行結果
VYM | HDV | SPYD | |
VYM | 1.00000 | 0.957236 | 0.922374 |
HDV | 0.957236 | 1.00000 | 0.901740 |
SPYD | 0.922374 | 0.901740 | 1.00000 |

全て相関関係が0.90以上と、相関関係が高いね。
前回実施した日経平均株価とS&P500の相関関係は0.51であることと比較すると、相関関係が高いことが分かります。
一方でHDVとSPYDの相関関係が最も低いことが分かります。
これはHDVとSPYDでの主要な投資先のセクターが異なることが要因と考えられます。
VYMとHDVの相関関係
相関関係が約0.96と高くなっています。
理由は投資比率の高い セクターが被っているためと考えられます。
相関関係を下記のヒストグラム付き分布図でも調査します。
各点が直線状に並んでいるほど相関関係が高くなります。


やや広がりがあるものの、きれいに直線状に各点が並んでいるね。
相関関係が高いことがわかるね。
HDVとSPYDの相関関係
一方で相関関係が0.90と低くなった理由は投資先が異なるからです。
HDVとSPYDの分布をみてみましょう。


やや分布が広がっており、相関関係が低くなったことが分かるね。
月次収益率のヒストグラム
月次収益率について確率分布を用いて検討を行います。
コード
sns.set_style('whitegrid')
f, axs = plt.subplots(1, 3, figsize=(12, 4))
sns.histplot(df_r_m, x='VYM', stat='probability', kde=True, ax=axs[0])
sns.histplot(df_r_m, x='HDV', stat='probability', kde=True, ax=axs[1], color='orange')
sns.histplot(df_r_m, x='SPYD', stat='probability', kde=True, ax=axs[2], color='green')
f.tight_layout()
実行結果

リターンがプラスになる確率>マイナスになる確率 ということが分かります。
3銘柄でややグラフの分布は異なりますが、概ね同じ傾向があります。
グラフを重ねてみます。
sns.histplot(df_r_m, x='VYM', stat='probability', kde=True, alpha=0.4, label='VYM')
sns.histplot(df_r_m, x='HDV', stat='probability', kde=True, alpha=0.4, color='orange',label='HDV')
sns.histplot(df_r_m, x='SPYD', stat='probability', kde=True, alpha=0.4, color='green', label='SPYD')
plt.legend()
plt.xlabel('Monthly Return')


確率分布上でもVYMがリターンが高いことが分かります。
また、グラフの形は前回と同じく、きれいなガウス分布でなく、左右非対称でマイナス側にグラフが広がっており、暴落がしばしば起きていることが読み取れるね。
年換算の平均リターンと標準偏差
3銘柄の年換算平均リターンと標準偏差の検討を行います。
コード
# 年率換算
r_y_mean = (1+df_r_m.mean())**12 -1
r_y_sd = np.sqrt(12) * df_r_m.std()
pd.DataFrame({'Mean':r_y_mean,
'Sd':r_y_sd,
'Mean/Sd': r_y_mean / r_y_sd})
実行結果
mean | sd | mean/sd | |
VYM | 0.091953 | 0.139412 | 0.659575 |
HDV | 0.056617 | 0.143972 | 0.393249 |
SPYD | 0.070237 | 0.186789 | 0.376024 |
各銘柄とも年間5%以上のリターンを出していることが分かります。
これは配当金については考慮していないので、配当金を含めたリターンは8%以上と考えられます。
リターン/リスク(mean/sd)ではVYMが最も高く、過去の投資実績では一番良かった結果になりました。
リスク(sd)を比較すると SPYD>HDV>VYM となり配当利回りが高い銘柄ほど高くなりました。

過去の実績だとVYMが一番良いことが分かったね。
一方で現在はVYMの利回りが低いため高配当ETFとしてのメリットは少ないかもしれません。
また、資産を増やすことが目的ならば、前回記事で紹介したVTやVOOに投資した方が利回りは高いです。
VTやVOOの投資利回りはこちらを参考にしてください⇩
時系列予想
prophet関数を用いて各銘柄の1年後までの時系列予想をします。
黒線が実際の株価。青線が予想値、薄く青い範囲が予想の範囲を表しています。
あくまで時系列予測ですので、大きな事件が発生したら外れることありますが、 今後の傾向を把握の参考にはなります。
prophet関数については下記の記事を参考してください。
コード
from fbprophet import Prophet
# 期間設定
start = datetime.datetime(2015,10,31)
end = datetime.datetime(2021,12,10)
# データ取得(銘柄ごとに変えてください)
df = web.DataReader('VYM','yahoo',start,end)
df.head()
df['ds']=df.index
df['y']=df['Adj Close']
df['y'].plot(figsize=(8,4))
# モデル作成
model = Prophet()
model.fit(df)
# 365日分予測
future = model.make_future_dataframe(periods=365)
forecast = model.predict(future)
# 結果確認
forecast[['ds', 'yhat', 'yhat_lower', 'yhat_upper']].tail()
fig1 = model.plot(forecast, figsize=(8,4))
VYM

HDV

SPYD


各銘柄とも右肩上がりで上昇していくことが予想されているね。
まとめ
高配当ETF(VYM, HDV, SPYD)をpythonを用いて比較を行いました。
過去の実績はVYMが最も良いと考えられます。
一方で現在VYMの配当利回りが下がっているため、高配当投資の利点は感じにくいかもしれません。
とにかく高い分配利回りが欲しい、現在の利回りが重要な場合はHDVとSPYDに分散投資するのがおすすめです。
多様なセクターにバランスよく投資できます。
今回比較した3銘柄とも大変良い成績を残してきて、どれを選択しても良いと思いますが、迷う方は下記を参考に決めると良いでしょう。
- 確実に資産を増やしながら配当金が欲しい : VYM
- 高い配当利回りが欲しい : HDVとSPYDと半分づつの分散投資

私は高配当投資はとにかく配当金が欲しいのでHDVとSPYDに投資しています。
資産を増やすのならVTやVTIに投資した方がリターンが高いので良いと考えています。
実際のpythonのコードはこちらの記事も参考にしてください。
プログラミング初心者でも簡単にシミュレーションできますので、ぜひ一度再現してみると新たな発見があるかもしれません。
また、大人気のETFであるVT,VTI,VOOについてもpythonで比較しました。
配当金は少ないものの高い値上がりが期待できます。
本記事の内容と比較することで自分がしたい投資手法を考えるきっかけになると思います。
一括投資とドルコスト平均法についてもpythonでシミュレーションを行いました。
結果一括投資の方が良い結果を得られる確率が高いことが分かりました。
本ブログではインデックス投資を初心者にはお勧めしています。
ぜひこちらの記事を参考にして投資をはじめ、豊かな資産を築きましょう。
参考記事
本記事で紹介したVYM・HDV・SPYDについて詳しく紹介されています。
銘柄選定する際にこれらも参考にしてはいかがでしょうか。